~ 実習生B ~

 段階別授業の組み立て方について述べる前に、それぞれの段階についての役割と必要性を挙げる。第一に、そもそも導入とは何のために行われるのかについて考えてみた。そして、学習者にこれから学習する内容を明確にイメージしてもらい、かつ新出文型となるこれから学習する内容がどのような場面で使われているのかを自然な流れとして認識してもらうために行われるものであるという結論に至った。さらに、導入においては、文法だけではなく、その課において用いる語彙の導入も同時に行う。その際、新出語句の確認だけではなく、既知の語彙を如何に学習者自身によって引き出させるかも大切なポイントであると言える。また、語彙導入では、同時に前回の課の復習も兼ねて行われるべきである。特に既知語は前段階の文法と絡めて引き出させることによって、より深い知識の定着につながることも期待できる。

  次に、機械的練習とは導入で触れた内容を学習者自らが使えるようになるために行われる、文字通りの「機械的な」繰り返し練習である。しかしここでの練習は、学習者が自ら使用語句や文法を考えたうえで、自発的に変形して使用することを期待して行われる。例えば、日常生活に密着した場面を作り上げて練習に組み込むことで、学習者に飽きが来ないように工夫し、さらには興味をもって自ら学習に食いついてくるようにすることが重要である。

 応用とは、機械的練習で身につけた文法を発展的に利用することを目的として行われる。例えば、機械的練習よりも難易度の高い、場面や会話を想像する必要のあるロールプレイや、ミニゲームなどがその例である。ここでは前述の練習よりも発展的であることが求められるため、教員が流れや内容を強制的に決めるのではなく、あくまでも学習者が主体となって進むように、教員はつまずいている学習者たちの支援側に回るべきであると考える。

 最後に、タスクとは上記の3つの段階を終えた最終的な習得度発表の場でもあり、教員主導ではなく、学習者同士が相談しあい、会話や文章を作成できるような授業を組み立てることが求められる。

 さて、ここまでに述べたこれらの段階授業はそれぞれが独立していてはならないと考える。4つの段階がすべて流れとしてつながっており、すべてつながったものの完成形が1つの課となるように組み立てられる必要性がある。ここで大切なのが連携である。つまり、これらの段階を分担して行うためにはそれぞれを受け持ち担当する指導者が連携し、指導者同士の意思の疎通を図っていなければならないといえる。最終的に学習者をどのような状態に持って生きたいのか、自分たちが望み、描いている学習者の完成状態を、それぞれの段階の指導者が全員等しく同じにしていなければならない。さらに、そのようにあらかじめ「ゴール」を定めた上で、そのゴールに向けた授業内容を考え、組み立てていく形式をバックワード・デザインといい、具体的には、最初に到達目標を定めたうえで、先にテストを作り、それから授業内容を思案するという、未来からスタートして徐々に視点を現在に近づけていくやり方の事を云う。

 そして、この方法を念頭に置いたうえで私自身の実習を振り返ってみる。
 そもそも私は完全に導入から考えていた。さらに、縦の連携に関しても、それぞれの段階の担当者が自分たちの指導教案を報告しあうだけで、それを「つなぎ合わそう」とはしてなかった。初めのうちは自分たちの段階さえうまくいき、理解させればいいと思っていたのだが、実際に授業を行い、学習者の反応を見ているうちに、私自身も「縦のつながり」の重要性に気付くようになった。特に、段階が変わるごとに新たに新出語句を導入することによって学習者の混乱が見られた。そこで私たちは、「導入・機械的練習」という初段階であらかたの新出語句は済ませてしまうという方法をとった。段階別の担当者で相談しあい、「応用・タスク」に必要な語彙を先に学ばせることで、実際に「応用・タスク」の場面になると、学習者自身がその語彙を引き出しながら使用することになり、かなり円滑で発展的な授業を行うことが可能になったと思う。

 次に授業を行う機会があれば、先に述べた今回の失敗と反省、さらに成功をもとにして、各段階が滑らかにつながっている授業をバックワード・デザイン形式によって組み立てようと思う。学習者がその課でどこまでの文法を学習、習得できるかあらかじめ設定しておき、その上で、その習得内容を正しく図れるようなテストを作成して、授業指導教案を作成する前に4段階のすべての担当者に事前に配布しておく。さらに、その習得設定・テストに基づいて、タスク・応用・機械的練習・導入の順で簡単な指導計画を提示し、共有しておく。ここまでを指導教案作成以前に済ませておくことで、教育者同士の連携も可能になり、ひとつの課においての一貫性が増す。一つの課の中でのつながりが強く一貫性が増すということは、学習者にとっても内容の理解度が高まり、混乱を極力低くすることが可能だということにもなる。さらに、段階をすべて終了した時点で、総括してその時間内の学びを振り返り/整理することも重要である。横溝(2011)は「『これこれができるようになった』という、いわゆるCan-do Statementsと、その日の学びを照らし合わせて伸びた部分を実感させることによって、伸長感を与えることができます」と述べている。この点に関しては、実習中は全く意識しておらず、授業が終わった段階で終了だと認識していた。しかし、本当の習得度を知り、定着を促すためにはこのような確認の場が不可欠なのだと気づかされた。また、長沼(2008)によると「まずは自信をつけさせやすいスキルに絞って、授業内の活動をひとつCan-do化してみることが、授業の焦点を明確化させ、透明性を高める」ことになるという。つまり、段階別に行った学習者参加型の授業形式の中で最も学習者自身が円滑に進め、なおかつ楽しそうにしていたものをピックアップし、復習に用いることで授業の重要点を確実に伝えることが可能になるというのである。

 以上の段階別授業の必要性と組み立て方、さらに授業終了時の授業内容確認の方法をしっかりと理解し、実際の教育の現場では学習者を主体とした学習者の興味を引く授業を実施していけるように努力しようと考える。

 

<参考文献>
・大森雅美・鴻野豊子著(2009)『ゴイタツ日本語教師をめざせ!』,株式会社アルク
・長沼君主(2008)「【第36回】Can-do statementsがもたらすもの」『日本語・日本語教育を研究する』
・横溝紳一郎(2011)『クラスルーム運営』株式会社くろしお出版),p.159
・横溝紳一郎(2004)「地域の日本語教室における1回完結型授業の試み-2名の教師による課題探求型アクション・リサーチ-」『日本語教育方法研究会誌』11号,pp20-21 
・李在鎬・石川慎一郎・砂川有里子(2012)『コーパス調査入門』,株式会社くろしお出版

<参考URL>
・地域の日本語教室における1回完結型授業の試み
-2名の教師による課題探求型アクション・リサーチ-
http://furubepu.ypu.jp/actionall/action_hirosima.htm 2014/8/23閲覧
・『JAPAN FOUNDATION 国際交流基金』
http://www.jpf.go.jp/j/japanese/index.html 2014/8/24閲覧